ベトナム市場|急成長している要因を現地生活とデータから解説

ベトナムは、東南アジアの中でも高い経済成長を続けている市場の一つです。日本から見ると、まだインフラが整っていないといったイメージを持たれることもあります。

しかし、実際に都市部で生活してみると、そうしたイメージだけでは捉えきれない変化が起きていることに気づきます。

高層マンションやショッピングモールが次々と建設され、スマートフォンを使った決済が日常生活に浸透しています。若い世代を中心にSNSの利用も活発で、新しい商品やサービスが広がるスピードにも目を見張るものがあります。

私はこれまで、オーストラリアで約4年間の留学・大学生活を送り、その後シンガポールで約3年間働き、ベトナム・ハノイへ移住しました。

先進国であるオーストラリアやシンガポールで生活した後にベトナムへ移ったからこそ、現地で感じた違いから、ベトナム市場の特徴がより明確に見えてきた部分があります。

今回は、ベトナムでの生活経験をもとに、ベトナム市場が成長を続けているのかを考えていきます。

①若い人口構造と変化する価値観

ベトナム市場を理解するうえで、まず注目したいのが人口構造の若さです。JETRO(日本貿易振興機構)が紹介する統計によると、ベトナムの平均年齢は30歳前後とされており、若い人口構成になっています。

実際にハノイで生活していると、若い世代の多さを日常的に感じます。ショッピングモールやカフェ、公園などには若者が多く集まり、街全体に活気があります。

若い人口が多いということは、就職、結婚、住宅購入、子育て、教育、レジャーなど、人生におけるさまざまな消費を経験する世代が厚く存在しているということです。

一方で、現地の若い方と話していると、価値観そのものも変化してきていることが分かります。

家庭を持つことを重視する従来型の価値観が残っている一方で、大学進学率の上昇や女性の社会進出などを背景に、キャリアや個人の時間を重視する考え方も広がっています。

このように、現在のベトナムでは、伝統的な家族観と都市型の新しいライフスタイルが同時に存在しているのです。この価値観の変化こそ、今後の消費市場を考えるうえで重要なポイントになるでしょう。

②教育意識の高まりと海外への関心

ベトナム市場の成長を考えるうえで、教育に対する意識の高さも見逃せません。

JETROが紹介する「UNESCO Institute for Statistics」のデータによると、ベトナムの高等教育への進学率は、2009年の20.23%から2019年には28.64%まで上昇しています。

タイやマレーシアと比較するとまだ高い水準とはいえませんが、過去と比較するとベトナム国内の大学進学が広がっていることが分かります。

背景には、企業が人材を採用する際に大学卒業資格を求めるケースが増えていることなどもあります。

都市部では、大学進学だけでなく、英語や日本語などの外国語を学ぶ人も少なくありません。国際交流基金の「2024年度 海外日本語教育機関調査」によると、日本語を学習者しているベトナム人は16万4千人程です。

また、出入国在留管理庁の統計によると、2025年末時点で日本に在留するベトナム人は68万1,100人程となっており、中国に次いで2番目に多い人数となっています。

こうしたデータからも、ベトナムと日本の人的交流が活発になっていることが分かります。

外国語を学び、海外で学ぶ・働くことを目指す人が増えていることは、ベトナムの若い世代が国内だけではなく、海外にも目を向けるようになっていることの一つの表れだと考えられます。

③子どもへの教育投資と消費ニーズの高度化

教育への関心は、若者だけに限った話ではありません。経済成長に伴って所得水準が上昇すると、家庭の消費も少しずつ変化していきます。

生活に必要な食料品や日用品だけではなく、教育、住宅、美容、健康、旅行など、より質の高い生活を実現するための商品・サービスへの関心が高まっていきます。

その象徴の一つが、ベトナムの大手企業Vingroup(ビングループ)が展開する教育事業です。同社が運営する「Vinschool(ビンスクール)」では、国際的な教育環境や多様なカリキュラムが提供されています。

こうした教育サービスが都市部を中心に展開されていることからも、子どもにより良い教育環境を与えたいという家庭のニーズが高まっていることがうかがえます。

④浸透化するデジタル化

ベトナム市場を語るうえで、もう一つ特徴的なのがデジタルテクノロジーの普及スピードです。

ハノイの街中では、現在も多くのバイクが走っています。日本とは大きく異なる交通環境ですが、一方でスマートフォンを中心としたデジタルサービスは急速に生活へ浸透しています。特に分かりやすいのが、キャッシュレス決済です。

大型のショッピングモールやチェーン店だけではなく、ローカルの飲食店やカフェなどでもQRコードを利用した決済を目にする機会が多くあります。

MoMo、ZaloPay、Viettel Money、ShopeePay、VNPayなど、複数のデジタル決済サービスが利用されており、スマートフォンを中心とした決済環境が日常生活に入り込んでいます。

また、TechcombankやTPBankなどの銀行では、スマートフォンのアプリを利用して、カードを使わずに現金を引き出せるサービスも普及しています。

直近でスマートフォンやデジタルサービスを前提とした新しい仕組みへ一気に移行しているフェーズとも言えます。

⑤SNSと口コミが生み出す消費トレンド

デジタル化の進展は、消費者の購買行動にも大きな影響を与えています。ベトナムでは、FacebookやTikTokなどのSNSが若い世代を中心に利用されているほか、国内で広く利用されているメッセージングアプリ「Zalo」も日常的なコミュニケーション手段として定着しています。

ハノイで生活していると、SNSをきっかけに話題になったカフェや飲食店、観光スポットなどに人が集まる光景を目にすることがあります。

SNS上で情報を知り、実際に店舗へ足を運び、自分自身も写真や動画を投稿する。

こうした行動が繰り返されることで、特定の商品やサービスの認知が短期間で広がっていきます。このような市場では、企業が一方的に情報を発信するだけでは十分ではありません。

ベトナム市場の特徴として、消費者自身が情報を発見し、それを他者と共有することで市場のトレンドが形成されるサイクルの速さとも言えます。

そのため、ベトナム市場ではSNSやインフルエンサーを活用したマーケティングとの相性も良く、消費者の反応をいかに早く捉えられるかが重要になります。

一方で、トレンドの移り変わりが速いということは、企業側にもスピードが求められるということです。昨日まで話題だったものが、数週間後には別のサービスに置き換わっていることもあります。

まとめ

ベトナム市場を理解するには、GDP成長率や人口、所得水準などの統計データだけでなく、実際に現地に行ってみて消費者が実際にどのような行動を取っているのかを見ることが重要です。

例えば、若者がどこに集まり、何にお金を使い、SNSでどのような情報を共有しているのか。また、海外の商品やサービスが現地でどのように受け入れられているのか。

こうした日常の変化を観察することで、数字だけでは見えにくい市場の熱量や消費者の変化が見えてきます。

特に変化の速いベトナムでは、過去のデータだけで判断するのではなく、現在進行形で変化する人々の価値観や消費行動を捉えることが、市場を理解するうえで重要です。

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上田一輝

Compass Storyでは、日本国内向けプロモーションとマーケティング翻訳を行っています。

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